2020年11月2日

1950年代はバカにできない

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こんにちは。ディープビジョン研究所です。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。

今日のコラムでは、
ブランド戦略コンサルタントの江上隆夫が、
「1950年代」の広告を振り返りながら、
ブランドづくりについてお伝えします。

1950年代。
あなたはまだ生まれていないかも知れませんね(><)

それでは、早速。

 

 

いまとなっては大昔なのですが、
1950年代から1960年代にかけて、
世界の広告界で話題になったキャンぺーンがあります。

メディアの主力がテレビに移りつつある中で、
打ったフォルクスワーゲンの広告です。

 

いまでは、シェークスピアの戯曲のように
名作であり、古典となってしまった広告です。

その効果を示すと・・・

1949年に、アメリカで売れたフォルクスワーゲンは2台。
その10年後の1959年後半は年平均12万台。

この落差をつくったのが「Think small」という考え方でした。

つまり、小さいことはいいことだ!
そして、車は質で選ぶのが正解!スマート!

そんな新聞、雑誌の広告キャンペーンをはったのです。

 

なぜ、あなたたちアメリカ人は、
そんな無駄に大きくて、
ガソリンを食って、運転のむつかしい、
さらに質の悪い車に乗っているのだい?
そんな頭のわるいことをいつまでやってんの?

(笑)そういうことを広告で
主張したわけではありませんが
文脈的に、そうとれるように
発信していったのですね。

 

当時のアメリカは
第二次世界大戦で戦勝国となり、
戦争景気から世界の復興景気へとつながり
たぶんアメリカの歴史上、
もっとも好景気にわいた時代です。

ほんとうの意味で
アメリカがアメリカを謳歌した時代です。

 

そこにアンチテーゼを撃ち込んだのが
この「Think small」です。

 

私が広告業界に入った時に
最初に教科書のように見せられたのが、
この1950年代から1960年代にかけて
当時のDDBという広告代理店が
仕掛けた、このキャンペーンでした。

 

いわば、ブランドの、ポジショニング
あるいはリポジショングの、
古典的な、そして理想的なかたちが、
このときのフォルクスワーゲンの戦略です。

「Think small」のシリーズの広告は
いくつもあるのですが、
まずは、その「Think small」を
ことばだけで
再現して見せましょう。(笑)

 

誌面もしくは紙面のビジュアルは
こんな感じです。

新聞1ページの紙面の
5分の4ほどのスペースを
1枚の写真が占めています。

その大きな写真の左上に
小さくフォルクスワーゲン・ビートル
つまり、あの有名なカブトムシ型の
車が小さく小さく映っています。

他には何も映っていません。
グレー調の大きな写真には
ぽつんとフォルクスワーゲン。

そして。

紙面の5分の1ほどの
白いスペースがその下にあり、
コピーが書かれています。

キャッチフレーズは
そこに少しだけ目立つように
「Think small」とあります。

その下に文章があります。
全文を翻訳でちょっと引用してみましょう。

===========

小さいことが理想

きっちりつめたら、ニューヨーク大学の18人の学生がサン・ルーフVWに乗れました。

フォルクスワーゲンは、家庭向きに考えて大きさが決められています。おかあさん、おとうさん、それに育ちざかりのこども3人というのが、この車にふさわしい定員です。

エコノミイ・ランで、VWは 1リットルあたり 平均21km強の記録を出しました。 あなたには、ちょっと無理な数字です。 プロのドライバーは商売上のすてきな秘けつを持っているんですから(お知りになりたい? ではVWBox #65 Englewood, N.J.へお手紙をどうぞ)。

ガソリンはレギュラー、また、オイルのことは次の交換時期までお忘れください。VWは在来の車より全長が4フィート短くできています (とはいっても、レッグ・ルームは同じくらいあります)。ほかの車が混雑したところをぐるぐる巡りしている間に、あなたはほんの狭い場所にも駐車できるんです。

VWのスペア部品は格安です。 新しいフロント・フェンダーは(VW特約店で)21.75ドル、 シリンダー・ヘッドは19.95ドル、品質がよいのでめったに必要とはしませんが。

新しいフォルクスワーゲン・セダンは1,565ドル、ラジオ, サイド・ビュー・ミラーのほか、あなたがほんとうに必要なものは全部ついています。

1959年には、12万人のアメリカ人が、小ささを考えてVWを買いました。ここのところを考えてみてください。

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こうした、フォルクスワーゲンの、
ポジショングを徹底的に訴求する広告を
打ちまくったのです。

このポジショング、在り方は
ライバルのアメリカメーカーにとっては
「ジレンマの領域」のポジション。

つまり「やれるけど、やりたくない」
ポジションなんです。

小さい車はつくろうとしたら
つくれるけど、つくると
自分たちの足元がぐらつく。

ジレンマですよね。

 

ブランドをどう打ち立てるか。

 

いまでも、
この広告キャンペーンには
その見事な、かつ学ぶべきエッセンスを
たっぷり含んでいると、私は思います。

つまり
ブランドづくりで
絶対に忘れてはいけないことは・・・

 

=================

本質を探って、本質から発信する

=================

 

ことなんです。

このキャンペーンに興味がある方は
以下のサイトで見れます・・・

http://d.hatena.ne.jp/chuukyuu/20071115/1195069561

引用もこちらからです。

ちなみにお気づきの方、
いらっしゃると思いますが・・・

ジョブズが
Appleに復帰してつくった
1997年の有名な広告があります。

 

 

この素晴らしい広告の
キャッチフレーズが
「Think different」

なんか、似てません?

というより正当な後継者かな。

 

 

いかがでしたか。
次回の更新もお楽しみに!