2020年11月18日

中国人向けセミナーで感じた日本人の美質について

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こんにちは。ディープビジョン研究所です。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。

今日のコラムでは、
ブランド戦略コンサルタントの江上隆夫が、
以前、中国の方向けのセミナーで感じたことを
ブランドから見る「日本人の美質」について
お伝えします。

それでは、早速。

 

 

ありがたいことに、
ここ何年も、いくつもの企業から
研修依頼をいただいています。
(2020年は新型コロナウイルスの影響で減少していますが)

 

きょうは、以前とある名古屋の企業から依頼されて
中国人向けのブランディングセミナー講師を
していたときに思ったことを話します。

そのセミナーの受講生は、
ほとんどが中国の流通から製造までの
幅広い業種のマーケティング担当者や、
企業経営者でした。

名古屋の、
そのセミナーマネジメント会社の
担当者に聞くと、10年程前までは
中国向けのセミナーのテーマは、
日本の製造業関連の生産方式などが
多かったそうです。

しかし、
最近はそうしたものはほとんどなく、
(つまり吸収し終えたということですね)
マーケティングやブランディングなどの講座に
移り変わってきていると言います。

最初に講師を担当したとき
驚いたことがありました。

そこそこの規模の企業の
マーケティング責任者が来ると聞いていたので
40代、50代の男性受講者を想像していたのですが
会場に入ってきたのは
20代から30代が中心で男女半々。

40代、50代も数名は居ましたが、
受講生のあまりの若々しさに
個人的に驚きを隠せませんでした。

3回ほど講師をしましたが、
20代から30代がメインの受講生は
毎回熱心に聞いてくれます。

ある日の講義は、
無印良品など中国でも
人気のいくつかのブランドを取り上げ、
そのブランディング戦略を解説したものです。

若い方がほとんどですが、
なんと受講者全員が
企業オーナーか、CEO(総経理)でした。

彼らに響いた内容がいくつかあったのですが、
きょうはその一つを紹介します。

 

それはブランディングとは
ある意味長期にわたる
「記憶のマネジメント戦略である」
ということです。

 

中国は、短期決戦型の
「すぐにやる」「いまやる」「ダメなら捨てる」を
超高速で繰り返していまの成功を勝ち取ってきました。

つまり、成果がいま見えないと
いま感じられないとダメなのです。

だから、実は打ち上げ花火は得意でも
ミルフィーユのように着実に積み重ねる仕事は
少なくとも現代中国は不得手です。

無印良品は、中国で若い層に
たいへん人気のあるブランドで
中国国内の店舗数は今日時点で229店を数えます。

中国では、中価格から高価格帯のブランド、
と思われているMUJIですが、
20代を中心に高い評価を得ています。

銀座にオープンした「MUJI HOTEL」も
一足先に深セン、北京にオープンしているくらいで
いかに愛されているかが分かります。

このブランドの力強さの源は、
1980年の誕生以来、積み重ねてきたことにあります。

それは、現代中国的なアプローチとは
正反対の40年近くにわたる
着実な「記憶のマネジメント」であり。

そして、自分たちのフィロソフィーを深め、
その深さを7000品目の製品の
「開発と提供に活かす仕組み」を
磨き続けてきたことです。

そこにはほとんどブレがありません。

 

面白いのは
無印良品(良品計画)の経営陣は
どんどん入れ替わります。

しかし、アドバイザリーボードと言われる
無印良品の在り方に一家言を物申してくれる
日本トップクラスのデザイナーなど
数名で構成する、このボードメンバーは
ごくゆっくりとしか変わらないことです。

 

これは、つまり無印良品というブランドは
ブランドのトーン&マナー、
目指す質や在り方、フィロソフィーを
経営陣が変ってもブレさせない希有な仕組みで
運営されていることに他なりません。

こうした事実には
中国国内でバリバリと企業経営する
彼らもとても納得したようでした。

本当に良いブランド、
つまり良いプロダクト、良いカルチャー、
良いイメージを持つブランドは
一朝一夕には出来ないのだ、
ということを理解したようです。

 

われわれ日本人は、ときに
このような積み重ねる作業を
ほんとうに“美しく”こなしていきます。

 

これは、
私たちが誇る「美質」のひとつ、
ではないかと強く思います。

では、また。

 

 

いかがでしたか。
次回の更新もお楽しみに!