2021年1月4日

新しい頭脳流出のこと

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明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
ディープビジョン研究所

 

さて、最初のコラムでは、
ブランド戦略コンサルタントの江上隆夫が、
「新しい頭脳流出のこと」についてお伝えします。

それでは、早速。

 

 

ちょっと今日は大きな話を。

1950年代から60年代、科学分野で
日本で騒動が持ち上がったことがあります。

それは「頭脳流出」です。

 

物理学で2008年にノーベル賞を受賞した学者
南部陽一郎(1921年1月18日ー2015年7月5日)先生は、
そのとき騒がれた代表的な学者のお一人だった。

南部先生は日本人の物理学者の方たちが
そろって尊敬していた先生で、
現代の素粒子論のほとんど分野に
非常に画期的なアイデアをもたらした方です。

超ひも理論のもとである「弦理論」は
1970年に南部先生(他にも独立して二人)が
発表した理論。

すごい先生だったのです。

その頃は優秀な頭脳はほとんどが
日本からアメリカへと渡っていったのです。

 

さて。最近に騒がれるようになった頭脳流出があります。
それは日本から中国への頭脳流出です。

特にそれは応用化学ではなく、
基礎科学の分野で著しくなっています。

 

日本の科学分野の予算は
近年、先の見えない基礎的な科学分野ではなく、
すぐにお金に変わったり、技術の先行きが見えやすい分野に
配分されることが多く、
また予算も減らされているため、
若手研究者は予算獲得に走り回って
忙殺されていると聞いたことがあります。

さらに博士号を取っても
就職するにもポストが無く、長年助手で甘んずる。
研究にも没頭できず、予算も少ない。
日本の研究者の環境は急速に悪化しています。

日本人の科学者がノーベル賞を取るごとに
この国の研究の将来を憂えるコメントを出すことが
毎度毎度のことになっています。

その中で、基礎科学にも潤沢に予算を配分し、
世界中から最高の人材を集め始めたのが中国。

いままではアメリカがその役割を果たしてきたのですが
AI、遺伝子、量子コンピュター、ロボティクス、宇宙開発など
かなり多くの分野で
中国が世界の先頭を走るようになってきています。

いまはまだ細い流れですが、
日本から中国へという頭脳流出の流れが
加速する可能性が高いと思われます。

アメリカから中国へという流れの大きな懸念点は
やはり一党独裁という社会の在り方でしょう。

研究の成果が世界の発展のために使われるならいいでしょうが、
そうでない可能性も多々あります。

長期の展望がなく、ビジョンを持っていない。
ビジョンがないから、場当たり的な対応に終始する。

現場で何が起こっているのか見ていないから、
柔軟な制度設計ができない。

いまの日本はそのような状況にあります。

基礎科学は時間もお金もかかります。
でも、大きなブレイクスルーは、そこからしか生まれません。

国の予算は大きく基礎科学に投じて、
企業とのコラボによってお金が回る仕組みをつくる。

企業側は用途を問わないお金を
プールできる仕組みを立ち上げ、
(国は税制的にサポートする)
研究成果がお金を生み出した場合は、
その仕組みを通じて利益を受け取れるようにする。

たとえば、このような
何らかの工夫を国、産、学が共同で考えた方がいい。

そうでないとノーベル賞級の研究は
日本から生まれることはなくなるはずです。

それは日本にとっても損失だけど
実は世界にとっても大きな損失なのだと思います。

 

 

いかがでしたか。
次回の更新もお楽しみに!