2020年11月14日
対立構造のポジショニングを使う
こんにちは。ディープビジョン研究所です。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
今日のコラムでは、
ブランド戦略コンサルタントの江上隆夫が、
ブランドを立ち上げていくときに
必ず取り組む「ポジショニング」についてお伝えします。
それでは、早速。
★
きょうはブランディングで
とても重要なポジショニングのことを
少しお伝えしますね。
ご自分のブランディングの参考にしてください。
さて。当たり前のことだが、
ほとんどの市場は飽和する運命にある。
だから最初に市場の中でポジションを確保した企業が
超有利な位置を占めることになる。
GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は
ほとんど1995年から2000年に創業されている。
日本でも楽天などのIT系企業で巨大になったところは
おおよそこの時期に創業している。
では、初期に市場の中でポジションを占めなければ
ならないかというと、そうでもない。
eBAYはネット販売の大手だが伸び率はわずかで
後発のアマゾンに圧倒的な差をつけられている。
戦略、戦術の重要性は言わずもがなである。
アマゾンは、そのサイトの利便性と
ロングテール&あらゆるものを扱うという戦略で
eBAYを抜き去ってしまった。
ただ、それでも続々と新しいサービス、製品を携えた
スタートアップは市場にデビューし続いけている。
(それでもどれだけ早い時期に位置取りできるかは重要だが)
後発企業は、先発の欠点、市場のすき間、
あるいは市場全体の大変換を狙って仕掛けていく。
いずれにしろ「どういうポジションで戦うか」を
考え抜かなければならない。
先発の欠点を突くのであれば
わざわざ「VS=対立」の構造に持ち込むポジションを
取ることが考えられる。
資生堂の「TUBAKI」は
「日本の女性は美しい」というキャッチフレーズで
ほとんどが外資系が占めていたヘアケア市場に
わざわざ「海外製品 VS 日本製品」という構造を持ちこむことによって
ポジションを確立した。
マーケティング的な体力がなければ成立しない手法で
このときの資生堂が投じたお金は40億円。
外資に占拠されたヘアケア市場を奪い返す、という
戦略的な使命を持ちながら、
日本の化粧品のトップブランドというポジションから攻めて行った。
ノルマンディー上陸作戦といっしょで、
一気に商品を市場に上陸させて
陸海空から大量のサポート(つまりマス広告、店頭展開)を
行うという物量作戦だ。
このマーケティングの真似はふつうはできないが
どのようなブランドでも、
この「対立構造」を持つ込むのは
ポジショニングではとても有効だと思う。
そう、弱者の戦略でもあるのだ。
なぜ、「対立構造」が有効かというと
対立することによって自分が際立つからだ。
相手を力を使って勝つといってもいい。
合気道ですね。
相手の力を使うので自分の力が
ライバルよりも劣っているときにも・・・
というより劣っているときこそ使ってほしい。
そして後発ブランドに有利だ。
なぜなら、先発で露わになっている
相手の弱点を攻めまくれるからだ。
たとえば・・・
これまた昔の話で申し訳ないが
角川書店が角川春樹さんをトップに抱いて快進撃を続けていたころ
「野性時代」という切り口で大キャンペーンを行ったことがあった。
その時、新潮社は新潮文庫で、ほぼ何十分の一の予算かで
キャンペーンを打ったと思うのだが、
その切り口が「知性」だった。
つまり、「野性」VS「知性」という
対立構造で自社のポジションをつくってしまったのである。
相手が「野性」でガンガン訴求するほど
「知性」にもスポットが当たるという
キャッチフレーズは・・
知性の差が 顔に出るらしいよ ……困ったね。
【新潮社 新潮文庫】
たしかに、これでは角川は何も手を出せない。
いまこうしたポジショニング手法が有効なのは
テクノロジー企業だろう。
それもまったく新しい分野に取り組んでいるところは使い出がある。
なぜなら、相手の強みを徹底的に陳腐化できるからだ。
たとえば・・・
TOYOTA vs 新興EVメーカー
カード会社 vs チャットペイ
既存生命保険 vs ネット保険
既存居酒屋 vs 定額会員制居酒屋
これは・・・
タクシー vs ウーバー
ホテル vs エアビーエヌビー
既存経済 vs シェアリングエコノミー
・・・などでも繰り返された図である。
ブランドを立ち上げていく場合、
あからさまな対立構造は
顧客の無用の反感を買う恐れもあるので避けてほしいが
相手のウィークポイントを突く、
対立構造のポジショニングは有効性が高い。
★
いかがでしたか。
次回の更新もお楽しみに!