
2025.09.20
カーティス・ヤービンと暗黒啓蒙について
こんにちは。ディープビジョン研究所です。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
今回、ブランド戦略コンサルタントの江上隆夫が
「カーティス・ヤービンと暗黒啓蒙について」
というテーマでお送りします。
それでは早速どうぞ!
★
アメリカに
カーティス・ヤービン(Curtis Yarvin)
という保守系思想家?がいます。
暗黒啓蒙と言われる考え方なのですが
まあ、早い話がいまのリベラル・民主主義を
破綻している制度としてみなして
解体と置き換えを主張しているのですね。
機能しない政治や国家に
腹を立てているわけです。
ヤービンが主張する論点は以下です。
1)階層性・権威・効率を重視して、
明確な統治者(CEO/専制的リーダー)の
もとで統治を行おう。
2)大学・マスメディアは「The Cathedral(カテドラル)」
つまり、「大聖堂」的存在で社会の真の自由や
真理の探求を阻害している。
3)社会の再起動やハードリセットを主張。
緩やかな改革じゃなく制度の根本的再構築を
やらなきゃダメ。
4)奴隷制度の養護。
白人のIQが黒人より高いのは遺伝的理由。
公民権運動は人間のごみ。
すごく乱暴に言ってしまえば
トランプ大統領は、ほぼ、ヤービンの
言っている通りに動いているんですね。
1)無数の大統領令、強権的介入
2)コロンビア、ハーバード、
新聞、テレビメディアへの圧迫
3)政府効率化省、省庁廃止、関税、留学生処置
4)移民排除、民族差別の容認的態度
ちなみにヤービンさんは
2025年1月の大統領就任祝賀会に
出席しています。
たぶん、トランプさんは自分で
意識しているのかどうか分からないけれど
「機能しないアメリカへの怒り」と
「王として振舞いたい欲望」が一体化していて。
習近平やプーチンへの
親近感あるいは微かな憧れの態度を示すのは
そのせいだと思うんですね。
(実は、この国の機能しなさ加減にいいかげんに
頭に来ているのは私も同じなのですが:笑)
面白いなあと思うのはヤービンが考える進化が
「封建主義」や「権威主義」と何ら変わらないことです。
この考え方は、まるで現代的な封建制なのですね。
つまり、王と貴族階級(権威)による統治を
テクノロジーを活用することで
現代にスライドさせている。
これは、何かというと「アメリカの中国化」です。
「アメリカのロシア化」と言ってもいいのですが。
中国はライバルなんだけど、
ああいうやり方はいいんじゃないか!好きだな~!
と思っている。
早い話、歴史を巻き戻しているわけですが、
権威主義は民主主義を歴史上一度も経験したことのない
中国や北朝鮮や、その定着に大失敗したロシアが
一時的にうまく行っているだけで、
歴史上、独裁&権威主義国家は必ず潰えてきています。
また、国の成り立ちを見ると・・・
アメリカは独立以前、権威主義的なイギリスからの
重税などに苦しみ、その影響下を脱するために
「自由、自治、平等」を掲げたわけですね。
ヨーロッパの歴史はフランス革命を見るまでもなく、
封建制→絶対王政(権威主義支配)→共和制→民主主義
という流れで、ヒットラーなどの失敗はありつつも
血を流しながらつかみとってきたものです。
その歴史の流れの中にあるアメリカは
まかり間違って歴史を逆回しして「中国化」を進めても、
かならずサーモスタットのように元に戻る、
そういう力が働くだろうな、というのが私の見立てです。
ただ、トランプさんやヤービンさんが
気づいていないのは「自由放任」の力ですよね。
「自由にやっていいよ~」という
枠組みはあっても、一種の秩序のなさが
アメリカの強みであったのに、
この力を削いでしまったアメリカの
科学力や知的生産力はかなり減衰します。
特に大学への介入は長期的にボディブローのように
効いてくるはずです。
日本の大学の研究力が長期的にボディブローのように
落ち続けているように(こちらはお金の無さですが)
戦争ばかりやって、他人の土地に来ては
人殺しし放題、資源取り放題の傍若無人を
ヨーロッパ民族はほぼ数百年間続けてきたわけですが。
だから彼らが「俺らの価値観はサイコーだろ?」と言っても
アフリカ、アジア、南米の多民族から見れば
「あんたらは人殺しで泥棒だったんだけど今は口を噤むのね」
という反応でにこやかに冷ややかに面従腹背する。
いまのトランプ政権への対応の仕方はどこも一緒ですね。
「こいつ、本当に〇イテーだな」と思いつつ
にこやかにおだてて、盗聴器のないところで
悪口を言っているんでしょうね。
権威主義の王は歴史を見ると誰も信じなくなる
そして誰も何も言わなくなる。
都合のいい情報だけで判断を繰り返す。
とても可哀そうだけど一度散々な目に遭うと断言できます。
ただ、しかし、あの人が「核のボタン」を
握っているんですよね。
これだけが本当に怖い。怖いです。
★
いかがでしたか。
自由と民主主義の国というアメリカのアイデンティティを
揺るがしているトランプ大統領。
一方で、短期的な紛争の回避や特定の外交成果としては
イラン・イスラエル停戦を実現させるなど、
トランプ大統領は「ピースメーカー」を自任しています。
ただ、予想不能な言動が多く、
国際秩序や同盟関係、そして国内情勢においては、
長期的かつ構造的な平和や安定を損ないかねない状況。
自己利益なのか。
本当はちゃんと平和を望んでいるのか。
私個としては、はっきりとは分かりません。
真のピースメーカーとして、
世界や国内の紛れも無い平和に
寄与してほしいと願ってやみません。
それでは、次回のブログ更新もお楽しみに!