
2025.08.16
「石原莞爾」と「風の谷」と戦略構想力
こんにちは。ディープビジョン研究所です。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
今回はブランド戦略コンサルタントの江上隆夫が
「『石原莞爾』と『風の谷』と戦略構想力」
というテーマでお話しします。
それでは早速どうぞ!
★
失われた30年というけれど
日本の最大の課題は
「ロングスパンの戦略設計」が
できないことにあります。
ロングスパンといっても
100年、200年ではなく、
せいぜい30年~50年スパンですが。
「戦略」とは与えられた条件の中で
最大限リスクを減らし、
最大限の成果を得られるような
「考え方」と「その実行計画」を言います。
「考え方」は「アイデア」や
「コンセプト」と言い換えてもいいし、
ひとこと「ビジョン」と言ってもいいでしょう。
日本の与えられた条件とは
「人口減少」
「超高齢化社会」
「財政不均衡」
「エネルギー資源はない」
「バブル期までのストック」
「真面目な国民気質」
「ユーラシア大陸の東端という地政学的位置」
「デジタル、AI、ロボティクス、核融合時代」
などでしょうか。
この条件下で
どのように自分たちの国や社会を運営し、
どのような国や社会をつくるのか。
これが戦略設計です。
政治家や官僚がつくった
ロングスパンの戦略設計って、見たことありますか?
私は、ないです。
私が、知らないだけかもしれませんが。
どこかにあるのかもしれないけど、
見たことも、聞いたこともない。
さて。
戦前、日本には
石原莞爾(いしはらかんじ)
という軍人が居ました。
彼は当時の超エリート軍人でしたが
東条英機と対立し、嫌われ、
東京裁判では手違いもあって
戦犯から免れています。
しかし、石原は関東軍作戦主任参謀であり、
満州事変を起こした張本人でもあります。
ある意味、戦後史的には極悪人かもしれません。
ちょっと硬い話が続きますが
少しだけお付き合いください。3^^;
石原には1940年に出版された
「世界最終戦論」という著作があります。
内容は1920年代末に構想されたものです。
荒唐無稽な部分もあるのですが
何か無視できないものがあるのですね。
石原は、日本とアメリカが
最終的に世界覇権を争うとし、
その戦争に勝利した日本が
アジアの解放と世界統一を実現する。
そのための戦争は科学技術の持久的な総力戦となり、
資源・人口・経済力の長期的準備が不可欠である。
そして、この総力戦の時代は
戦争自身が進化し、やがて絶滅する
(絶対平和が到来する)と述べています。
その前提条件として、
「一発で都市を壊滅させられる」武器と
地球を無着陸で何回も周れるような
兵器の存在を想定していました。
この構想自体は1910年代と言われています。
毀誉褒貶も多く、最終戦論自体が
かなり空想的ではあります。
また、熱心な日蓮主義者であった影響も
その言動のはしばしに感じますが・・・
その大きな構想力は
日本の軍人にはないものでした。
あ、誤解しないでくださいね。
私は、真正の保守は嫌いではありませんが
どちらかというとリベラル系の人間です。
なので、ここでは、
石原の「戦略の内容」ではなく、
物事を大きく歴史的、進化史的につかまえて
「戦略を構想する力」を褒めていますので
くれぐれも誤解なきよう(笑)
これくらい大きな戦略構想力は
戦後80年経っても、なかなか現れない。
そう思っていたら数百年スパンで
物事を考える「戦略構想」が現れました。
安宅和人『「風の谷」という希望」―残すに値する未来をつくる』
https://x.gd/ugciY
話題の本です。
詳細は、次週の金曜日配信で扱います。
ということで戦後80年、
終戦記念日の日に。
皆様、先祖を偲びつつ、
80年前の辛苦に思いを馳せつつ
良いお盆をお過ごしくださいませ。
★
いかがでしたか。
戦後80年。
戦禍を生き延びた人々、
戦禍に犠牲になった人々。
当時光の見えない中で彼らが必死に望んだ未来は、
今のような世界でよかったのかー。
そんな想像をすると、
時々、申し訳ないような、そんな気になります。
爆撃機も飛んでこないし、徴兵制もないし、
いちおう今日本は平和ではあると言えると思いますが。
今こそ、明るい未来を構想する力、
求められていますね。
それでは、次回のブログ更新もお楽しみに!