2020年12月17日

海外に凄い寿司屋がなくて日本に凄いフレンチがある訳

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こんにちは。ディープビジョン研究所です。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。

今日のコラムでは、
ブランド戦略コンサルタントの江上隆夫が、
食の分野から、日本人の特質をお伝えします。

それでは、早速。

工場とか会社とかと違って
食はひとりの人間が取り組もうと思ったら
毎日のことだし、材料さえあれば
誰でもトライできます。

だから、食の傾向を見ると、
その国民の特長が出る
と私は考えています。

 

そして、日本人ほど他国の食を
どん欲に取り入れて
「自家薬籠中の物にしている」民族は
世界でもマレです。

その理由を考えてみましょう。

 

フレンチのシェフは世界中にいます。
イタリアンのシェフも世界中にいるでしょう。
中華のシェフも世界中にいると思います。

しかし、他国の料理を、
これほど自分のものにしているシェフが多い国は
圧倒的に日本だと思います。

つまり、本国とほとんど変わらないレベルまで
料理が美味しく、さらには抜いてしまうまでに
レベルがあがっている。

また、時には海外から入ったものを
新たなカタチに進化させ、
カレーやラーメン、パスタあるいは
洋食のように独自色が強く
かつ美味しい料理を生み出してしまう。

これは、まず良いと思ったものを
淫するほど極めてしまう、
日本人の体質が
影響していることは確かです。

料理店を、ちょっとパリと東京で
比較してみましょう。

パリにある料理店の数は
12,802店(2016年ジェトロ調べ)。

東京にあるレストラン数は
136,415店(食べログ検索)。

パリとパリの周辺人口は1229万人。
東京と東京周辺の人口は3814万人。

人口比だとパリは960人に1店舗。
東京は280人に1店舗。

つまり東京は人口比で、
パリの3.5倍ほどの料理店が
ひしめき合っている状態。

激烈な競争状態にあるとも言えます。
量が質を担保すると考えるなら、
この量が料理の質を上げています。

ミシュラン東京の星付きのお店の数は230店。
パリは118店。(2018年)

 

圧倒的な世界一です。

 

フレンチは日本人シェフで
一つ星から三つ星まですべてが揃っています。

フレンチが外交などの場で
世界的な標準食である、ということを考慮に入れても
これは凄いことだし、奇妙なことでもあるのです。

なぜなら、逆を考えてみればいいのです。

寿司は、いま先進国はもちろん
ある程度の途上国であれば食べられる
世界食になっています。

だから、世界中に日本人以外が握る
最高の寿司があって良さそうなのに
私が知る限り、ほとんど存在しないのです。

フランスにも
フランス人が握るフランス人のための
まとも(そうな)寿司屋は、
私が知る限り1軒ありますが。
(雑誌で読んだだけなので味は不明)

でも、わずか1軒。

パリで星付きの
寿司屋(仁 JIN saint-honor?)は
日本人の板前さんです。

たとえば・・・
パリにフランス人が握る寿司屋があり、
そこにフランス人が押しかけて舌鼓を打つ。

その寿司のレベルをフランス人の料理評論家が
「漬けには隠し包丁が利いていて、
赤酢の酢飯といっしょに口に入れると
溶けるようにほどけて微かな酸味を
まとった鮪の風味が一杯に広がる・・」
てなことを雑誌に書く。

それをフランス人が読んで
今週末食べに行こう!と思う。

ほぼ完全にその食文化を取り入れて
自分のものにする、とは
こういう循環が成立する状況を指すと
私は考えています。

 

しかし、残念ながら、そこまで寿司を
取り入れた国は見たことがない。

しかし、日本人は、
これを各国の食でやっているのです。

 

ちなみに・・・
食べログの「フレンチ」検索では
日本のフレンチのお店は10,945店!

以下、イタリアン(24,520店)、中華(42,245店)、
韓国(8,834店)、スペイン(1,629店)、インド(4,481店)、
タイ(2,033店)etc ・・ 同様です。

日本にはフランス人が食べても唸る
日本人シェフのフランス店が数多くあります。
日本人シェフの欧米系料理店の三ツ星は3店。

 

とある雑誌のイタリア料理特集のタイトルは
「やっぱり日本は、イタリア21番目の州です!」
というもの(笑)

日本でしか修行したことがないシェフなのに
イタリア人ワインオーナーがわざわざ食べにくる
イタリア料理店だって、日本にはあります。

日本人は、どこかに「本物」があり、
その「本物」を学ぼう(真似ぶ)という構えになったときに
とてつもない力を発揮します。

日本のお店の中で、日本語を排して
その国のことばや音楽、映像しか
自分に触れさせずに、その上で徹底的に
料理に向き合うということをやってしまうのです。

自分が取り組む分野には
なにがしかの本物が存在する。

その本物とやらをどうしても身につけたい。

そう思い定めたときに
私たちの学びの力は最大化され、
吸収力はマックスになる。

食の世界を俯瞰してみると、
そういう日本人の持つ、
強烈な現実咀嚼力のようなものが見えてきます。

圧倒的な落差、知らなかった本物、
とことん出遅れているという認識、
こうしたものを身の回りに探して
気づくとき、たぶんあなたの学びの力も
MAXになる。

日本人の
柔道、剣道、茶道、花道などの
「◎◎道」は
こうして始まったのでしょう。

 

 

いかがでしたか。
次回の更新もお楽しみに!