2021年2月12日

「獺祭」(だっさい)のブランド戦略への注文

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こんにちは。ディープビジョン研究所です。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。

今日のコラムでは、
ブランド戦略コンサルタントの江上隆夫が好きなお酒の話題です。

ウイズコロナ、新しい生活様式でほろ酔い習慣が、
激減してしまった江上ですが、健康にはいいですね。

それでは、ブランド戦略の話へ早速。

 

 

ブランドは突き詰めれば記憶です。

つまり、対象のブランドが
良い記憶として、人の中にあるとき、
それはブランドとして成立します。

この「良い記憶化」は
ブランドではないものと明らかに
違うメリットを生みます。

最大のメリットは
「お客様から探してもらえる」
ということです。

普通はこっち側がお客様を探すのに。

ブランドとは、ある種の希少性です。

ある分野で「これ以外に他に替りがない!」
と思われていると、そのブランドが
お客様を探しに行く必要はなくなります。

探さなければならないブランド、
探してでもどうしてもほしいブランドになる、
ということです。

 

「獺祭」という日本酒のブランドがあります。
山口県の旭酒造で作られているお酒です。
http://www.asahishuzo.ne.jp/

淡麗とはこのことかという味で、
ここの「磨き二割三分遠心分離」という大吟醸などは
あまりに淡麗すぎて最初は物足りなく感じるほどでした。

しかし、本当にうまい!!

食中酒としては日本酒でも最高峰でしょう。

 

「獺祭」は
ハイブランドとしての「SAKE」を
世界に打ち出して大成功しました。

一時期はとにかく手に入らないお酒で
扱っている酒店が少なく、見つけるのに
とても苦労しました。

私は偶然販売する酒店を見つけたお陰で
ほとんどの種類の「獺祭」を
味わうことができましたが
それでもアッと言う間に売り切れるので
手に入れるとき入荷時期には気を使っていました。

しかし、ここ数年でしょうか。

旭酒造が製造ラインをかなり増強し、
生産量を一気に増やしたお陰で、
至るところで「獺祭」を
飲める、買える状態になってきました。

個人的には嬉しいと同時に複雑です。

 

なぜならスーパーでも
たまに見かける酒になってしまったからです。

つまり、ブランドを下げている。
ブランドではなくなりつつある。

 

たくさんの人が飲めるようにという
旭酒造の志が、築き上げたブランドを
破壊し始めているのです。

有難みは急速に薄れています。

ブランドの価値は「希少性」にあります。
特にモノはそうです。

レッドオーシャンでの闘いは
ブランドが築けているなら、
その希少性をどう維持するかが勝敗を握ります。

だからこそ、お客様から探してもらえる。
広告費が不要で、もっとも信頼性が高い
メディア!「口コミ」だけで拡販できる。

 

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需要-1台=生産&販売台数
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ポルシェやフェラーリはかたくなに
この法則を守ります。

1000台の需要があれば999台しか作らない。

ダイヤモンドのひどい値崩れから
デビス社を救ったのは供給制限でした。

市場に需要を必ず残すのが彼らのやり方です。
ブランドはこうあるべきです。

日本酒でも・・・

十四代(じゅようんだい)
醸し人九平次(かもしびとくへいじ)
黒龍(こくりゅう)
仙禽(せんきん)
而今(じこん)
作(ざく)

・・・などの名酒は
やはりなかなか手に入りません。

 

だから、少なくとも私にとっては
これらはブランドであり、
いまのところ飲みたい酒であり続けます。

「獺祭」は、味は変わらずに美味しい。

しかし、満足度は
「希少性」が少なくなるほど
下がっていきます。

なぜなら「味の価値」ではなく
「体験の価値」が下がるからです。

体験として安くなっているとも言えます。

「獺祭」のブランド価値を保ってほしい!

つまり希少性を失わないでほしい、
取り戻してほしい、と切に願います。

ま、それはさておき。
いや~、でもうまい、この酒!

 

 

いかがでしたか。
次回の更新もお楽しみに!